カプサイシンの適用と脱感作についての研究論文
ポリモーダル受容器の分子実体であるTRPV1が発見されてから、研究者たちは、カプサイシンをはじめとする様々なアゴニストを用いて慢性痛の効果的な治療のため様々な研究を行っています。
TRPV1のチャネル活動はカプサイシンの量(濃度)に依存する
TRPV1チャネルの活動が、カプサイシンの用量の大小に依存することを示した実験
この研究では「カルシウムイオンの流入」と「感覚神経の神経電位反応」を計測し、カプサイシンとRTX(*)は感覚神経において用量依存的なカルシウムイオンの流入を誘発することが明らかにされました。
(*)RTXはカプサイシンと同様の働きをする物質ですが、カプサイシンよりも強力にTRPV1と結合します。
チャネル活動は、カプサイシン濃度に用量依存的な関係を示す。
→この実験から、カプサイシンが多いほど侵害刺激が強く、痛みは強いということが言えます。
Capsaicin activates a nonselective cation channel in cultured neonatal rat dorsal root ganglion neurons.; Hwang SW, Kim D. Oh U., J Neurosci. 1996; 16:1659–1667.
脱感作はカルシウムに依存した現象である
カプサイシンがアゴニストとしてTRPV1チャネルに結合することで、細胞内にカルシウムイオンが流入し電位が上昇します。起動電位が閾値を超え活動電位が生じると、初期段階では神経ペプチドが放出されますが、その後は放出されなくなります(=脱感作)。
1.
カルシウムが細胞環境から除去されていると脱感作は生じないので、脱感作はカルシウムに依存したプロセスといえます。
・The role of calcium in capsaicin-induced desensitization in rat cultured dorsal root ganglion neurons.; Cholewinski A, Burgess GM, Bevan S., Neuroscience 1993; 55: 1015.
・Calcium-dependent and independent desensitization of capsaicin-evoked responses in voltage-clamped adult rat dorsal root ganglion (DRG) neurones in culture. ; Yeats JC, Docherty RJ, Bevan S., Journal of Physiology 1992; 446: 390P.
2.
機能的脱感作も細胞内にカルシウムが十分に存在しないと生じないことが明らかになっています。
・Exposure to calcium-free medium protects sensory fibers by capsaicin desensitization.; Santicioli P, Patacchini R, Maggi CA, Meli A., Neuroscience Letters 1987; 80: 167–172.
・Capsaicin: Cellular targets, mechanisms of action, and selectivity for thin sensory neurons.; Holzer P., Pharmacological Reviews 1991; 43: 143–201.
3.
拮抗物質によりカルシウムの働きを積極的に阻害すると機能的脱感作は生じないことからカルシウムイオンの存在が不可欠であることが分かります。
Capsaicin desensitization in vivo is inhibited by ruthenium red.; Amann R, Donnerer J, Maggi CA, Giuliani S, DelBianco E, Weihe E, Lembeck F., European Journal of Pharmacology 1990; 186: 169–175.
脱感作すると神経ペプチドは放出されなくなる
カプサイシンにより脱感作が生じると、たとえ神経内に神経ペプチドが存在していたとしても侵害刺激を与えてももはや神経ペプチドは放出されなくなります。つまり、同レベルの侵害刺激を受けても痛み感覚が生じない事になります。
・Topical capsaicin pretreatment inhibits axon reflex vasodilatation caused by somatostatin and vasoactive intestinal peptide in human skin.; Anand P , B loom S R, M cGregor G P., British Journal of Pharmacology 1983; 78: 665–669.
・Capsaicin desensitisation to plasma extravasation evoked by antidromic C-fiber stimulation is not associated with antinociception in the rat.; Carter RB, Francis WR., Neuroscience Letters 1991; 127: 49–52.
・The consequences of long-term topical capsaicin application in the rat.; McMahon SB, Lewin G, Bloom SR., Pain 1991; 44: 301–310.
カプサイシンの鎮痛効果は用量に依存する
効果がどのくらい継続するか(数時間~数カ月)は、この効果がどのくらい継続するか(数時間~数カ月)は、カプサイシンの濃度・用量に依ります。
→ 低用量の使用では効果は数時間程度の鎮痛と抗炎症作用
低濃度のカプサイシンの適用は臨床効果を示さないか、ごく短期の効果に留まる。
低濃度の設定は0.025%、 0.075% など実験により異なりますが、概ね1%未満のカプサイシン入りのクリームやパッチを1日数回塗布・貼付する実験が多いです。
低濃度のカプサイシンでは有意な臨床効果なしという結果の実験
低濃度のカプサイシンを使用したこれらの研究においては、有意な鎮痛効果が認められませんでした。
・Topical capsaicin (low concentration) for chronic neuropathic pain in adults.; Derry, S.; Moore, R.A., Cochrane Database Syst. Rev. 2012, 9.
→ 慢性神経痛の成人389名を対象に、1%未満(0.075%)のカプサイシン・クリームを日に数回、6週間以上に渡り適用した。
結果としては、神経痛の治療として0.075%のカプサイシンを適用した治療の効果は確認できなかった。プラセボ群と比べて効果的というデータではなかった。
・0.025% capsaicin gel for the treatment of painful diabetic neuropathy: A randomized, double-blind, crossover, placebo-controlled trial. Kulkantrakorn, K.; Lorsuwansiri, C.; Meesawatsom, P., Pain Pract. 2013, 13,497–503.
→ PDN(painful diabetic neuropathy:糖尿病性神経痛)患者を対象に、20週にわたり、ランダム化二重盲検で0.025%カプサイシンのジェルを適用した結果、0.025%のカプサイシン・ジェルは安全で、適用時の痛みもほとんど問題がなかったが痛みの軽減効果という点では有意な改善は見られなかった。
・Liposomal topical capsaicin in post-herpetic neuralgia: A safety pilot study.; Teixeira, M.J.; Menezes, L.M.; Silva, V.; Galhardoni, R.; Sasson, J.; Okada, M.; Duarte, K.P., Arq. Neuropsiquiatr. 2015, 73, 237–240.
・Topical capsaicin (low concentration) for chronic neuropathic pain in adults.; Derry, S.; Moore, R.A.,Cochrane Database Syst. Rev. 2012, 9.
・Treatment of pain due to fibromyalgia with topical capsaicin: a pilot study.; McCarty DJ, Csuka M, McCarthy G et al., Semin Arthritis Rheum 23, 1994, (Suppl 3):41–47.
低濃度のカプサイシンにより短期の効果のみ認められた実験
低濃度のカプサイシンの使用で、短期間の鎮痛効果が認められたことを報告する研究です。
・Pharmacologic interventions for painful diabetic neuropathy: An umbrella systematic review and comparative effectiveness network meta-analysis.; Griebeler, M.L.; Morey-Vargas, O.L.; Brito, J.P.; Tsapas, A.; Wang, Z.; Carranza Leon, B.G.; Phung, O.J.; Montori, V.M.; Murad, M.H.; Ann. Intern. Med. 2014, 161, 639–649.
・Short-term efficacy of topical capsaicin therapy in severely affected fibromyalgia patients.; Casanueva, B.; Rodero, B.; Quintial, C.; Llorca, J.; Gonzalez-Gay, M.A., Rheumatol. Int. 2013, 33, 2665–2670.
→ 130名の線維筋痛症患者を対象に、0.075%の局所カプサイシンを一日3回、6週間適用したところ有意な症状の改善(痛みの軽減)が認められた。
カプサイシンへの繰り返し暴露による脱感作の現象と効果が用量に依存することを示した実験
Szolcsanyi J, Jancso-Gabor A, Joo F. Functional and fine structural characteristics of the sensory neuron blocking effect of capsaicin. Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol. 1975; 287:157–169.
脱感作効果はカプサイシンの用量に依存する反応。高濃度適用は全体的な無感覚(強い脱感作)を生じる。
ラットを用いたこの論文では、脱感作には3つの局面があるとしています。
1. 完全な脱感作
2. 敏感さが減少している状態(急な適用への傾向)
3. 通常の、初期の敏感状態(痛み刺激への即時的な反応)
微小小胞体と膨張したミトコンドリアの存在が確認されたが、その他の神経組織の構造的変化などはなかった。
カプサイシン適用による脱感作で生じたミトコンドリアの膨張は、60日後も継続している。
カプサイシンは、特定の感覚神経の働きをブロックする効果がある。
Fig.1
カプサイシン適用により、初期には痛み行動が増える。
そして反復適用で脱感作が生じる。
脱感作が長く続くのは、カプサイシンが痛みを伝える一次感覚神経の特定の分子に強固に結合し、その分子の再合成が遅いためではないか、と考察しています。
脱感作は受容器の単なる閾値の上昇というものではない。
速いスピードで受容器の反応が変化していくのは感覚受容器の感度回復の抑制によると考えられる。完全な興奮のためには長時間のインターバルが必要。
低用量(2~5×10⁻⁵)のカプサイシン適用は2時間ほどの脱感作を生じ、1%カプサイシン適用は5-7日脱感作が続いた。
カプサイシンの影響・効果は連続的で興奮から細胞死まで生じます。
多くの脊髄後根神経はカプサイシン治療により変性を起こします。高濃度の全身注射を行うと多くのC線維神経の終末が死滅しますが神経細胞は死ぬわけではなく活発に再発生を試みます。
高濃度のカプサイシンは適用時の痛みはとても強いので、いくつかの実験では対カプサイシンの鎮痛処置を予め行ってからカプサイシンを適用しています。
高濃度のカプサイシンは、鎮痛効果が高く脱感作を生じます。
その時、神経ペプチドの枯渇、神経線維の変性、TRPV1や神経線維の損失・破壊、ミトコンドリアの機能機能不全などが生じていることが報告されています。
高濃度のカプサイシン適用は鎮痛効果が高く、その効果も長く続くことを示した実験
1.
10名の被験者を対象に50週に渡り治療効果を観察。
5-10%濃度のカプサイシンを使用。
すべての患者に少なくともいくらかの鎮痛効果が見られた。
9名は18週まで鎮痛効果が確認された。
*高濃度カプサイシンが効果が高いが、処方時の痛みが強いのでそれを押さえるために麻酔などの処置が必要とのこと。
Treatment of intractable pain with topical large-dose capsaicin: preliminary report.; Robbins WR, Staats PS, Levine J, Fields HL, Allen RW, Campbell JN, Pappagallo M., Anesth Analg. 1998; 86:579–583.
2.
従来、高濃度の処置を使用とした場合の制限は強烈な焼けるような痛みが生じること。それを可能にするために局所麻酔を行った。5-10%(商用の100倍の濃度)
CRPS患者10人の被験者。VASは8から4.5へ。8回の治療。
Treatment of Intractable Pain with Topical Large-Dose Capsaicin: Preliminary Report; Wendye R. Robbins, MD*, Peter S. Staats, MDt., et al., Departments of Anesthesia, Medicine, and Neurology, Anesth Analg 1998;86:579-83)
3.
Capsaicin Activates a Nonselective Cation Channel in Cultured Neonatal Rat Dorsal Root Ganglion Neurons.;The Journal of Neuroscience, March 1, 1996, 76(5):1659-1667.
カプサイシンの皮下注射が皮膚神経線維に形態学的変化をもたらすことを報告する実験
注射後の様々な時点での神経線維を皮膚組織の生検で可視化した。正常な皮膚組織においてはPGP9.5という神経細胞の細胞質に存在する主要なタンパク質成分に対する免疫活性神経線維が濃密に支配しており、SP・CGRPに対する免疫活性の線維は血管と関連がある。
カプサイシン処置がなされた皮膚・皮下組織の神経叢においてはほぼ完全に変性が見られた。具体的には、PGP9.5やCGRPに対する免疫活性の喪失によってそれが示される。
カプサイシンは鋭い機械刺激により生じる痛みや熱による痛みの感度を減少させる。
その効果は3週間後も、通常の25-50%程度までの感度に留まる。
これらのデータが示すのは、カプサイシン適用後の感覚の働きの変化(不全)は皮膚神経線維の即時的な脱感作の結果である。
**PGPテストについて
Effects of Topical Capsaicin on Cutaneous Innervation: Implications for Pain Management; Keith Bley, The Open Pain Journal, 2013, 6, (Supple 1: M9) 81-94.
によれば皮膚神経支配の病態生化学的な変化を調べるための検査法として一般的に用いられるものでこのような実験では侵害受容器の機能変化を知るために用いています。
Intradermal injection of capsaicin in humans produces degeneration and subsequent reinnervation of epidermal nerve fibers: correlation with sensory function.; Simone DA, Nolano M, Johnson T, Wendelschafer-Crabb G, Kennedy WR., J Neurosci. 1998; 18:8947–8959.
CRPS(複合性局所疼痛症候群)への治療効果
局所のカプサイシンはCRPS(複合性局所疼痛症候群)の患者を含む神経ニューロパシーの特徴の痛み治療において効果がある。
CRPSの患者を対象にした72の論文(92のコントロールされた実験と48の臨床データを含む)を分析。
*CRPS: complex regional pain syndrome (複合性局所疼痛症候群)
その結果、局所のカプサイシンはCRPSの患者を含む神経ニューロパシーの特徴の痛み治療において効果がある。
Kingery WS. A critical review of controlled clinical trials for peripheral neuropathic pain and complex regional pain syndromes. Pain. 1997; 73:123–139. [PubMed: 9415498]
*他にも帯状疱疹後神経痛、HIVによる疼痛、糖尿病性神経痛などの患者に対する高濃度カプサイシンの鎮痛効果を報告する研究が多数あります。
帯状疱疹後神経痛へのカプサイシン適用は効果が高いことを報告する Lynn,1990.など。
Capsaicin: actions on nociceptive C-fibres and therapeutic potential Review.; B Lynn., Pain. 1990. Apr;41(1):61-9. doi: 10.1016/0304-3959(90)91110-5.
高濃度カプサイシンの鎮痛・脱感作効果を報告する研究
1.
高濃度カプサイシンパッチ(8%)の皮膚への1-2時間の適用が皮膚神経線維に対して長い期間の変化を生み出す。熱への敏感さが減少。
これは、短期間の高濃度カプサイシンの適用が、以前に確認されていた低濃度クリームの繰り返し適用(3‐5回・日を1週間)で生じる変化と同様のもの。
→通常、0.025–0.075%という濃度で適用されているカプサイシンパッチだが、有意な鎮痛効果を得るためには数週間にわたり、一日3~5回適用する必要がある。
そこでこの研究では1回の高濃度(8%)のカプサイシンパッチ60・120分で同様の効果が得られるか検証した。
熱刺激に対する感作の減少が見られた。(冷刺激に対しては変化なし)
他の条件、低濃度0.04%を120分、高濃度を30分、というグループはいずれも有意な効果が見られなかった。
60分以上の高濃度パッチが有効。
Malmberg AB, Mizisin AP, Calcutt NA, von Stein T, Robbins WR, Bley KR. Reduced heat sensitivity and epidermal nerve fiber immunostaining following single applications of a highconcentration capsaicin patch. Pain. 2004; 111:360–367. [PubMed: 15363880]
2.
ランダム化二重盲検による試験で、帯状疱疹後神経痛の治療としてNGX-4010という高濃度(8%)パッチの1時間の適用が、有意に痛みを軽減しその効果が2‐12週続いた。
402名の患者を対象に高濃度(8%)と低濃度(0.04%)カプサイシン・パッチを1時間適用する
被験者 18-90歳の帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia)最低6か月つづく。
NPRSスコアで痛みを評価
NGX‐4010群(206名)が有意に、痛みが大幅に減少。196名のコントロール群に比べて。
2~8週間の間の痛みが減少。
治療時の痛み等局所で生じる反応以外に、特に副作用も生じなかった。
Backonja M, Wallace MS, Blonsky ER, et al. NGX-4010, a high-concentration capsaicin patch, for the treatment of postherpetic neuralgia: a randomised, double-blind study. Lancet Neurol. 2008; 7:1106–1112.
3.
16人の顎関節症患者への治療
二重盲検法
8%カプサイシンを2時間適用
2時間後、1週間後のVASを計測した。
適用2時間後は疼痛閾値が低下し痛かったが、1週間後には解決。
Effects of High-Dose Capsaicin on TMD Subjects: A Randomized Clinical Study; B.K. Campbell., et al.,JDR Clinical & Translational Research, vol.2,issue1, 2017.
他にも同様の報告は多数あります。
Topical capsaicin for pain management: therapeutic potential and mechanisms of action of the new high-concentration capsaicin 8% patch ; P. Anand and K. Bley, British Journal of Anaesthesia 107 (4): 490–502 (2011)
A Multicenter, Randomized, Double-Blind, Controlled Study of NGX-4010, a High-Concentration Capsaicin Patch, for the Treatment of Postherpetic Neuralgia; Gordon A. Irving, Miroslav M. Backonja, Pain Medicine 2011; 12: 99–109.
など
高濃度カプサイシンがミトコンドリアのダメージをもたらすことを報告した研究
Mitochondrial alterations in the spinal ganglion cells of the rat accompanying the long-lasting sensory disturbance induced by capsaicin.; Joó F, Szolcsányi J, Jancsó-Gábor A., Life Sciences 1969; 8: 621–625.
局所的カプサイシン適用で生じる皮膚神経支配の減少はミトコンドリアへの収斂的結果を含む。
カプサイシンは高度にTRPV1に結合するアゴニストであり、TRPV1が活性化するとTRPV1は開きNa、Caイオンを流入させる。
活動電位・情報が最終的に脳へ伝わると痛み感覚が生じる。
電位依存のNaチャネルの不活性は電気的興奮を減少させる。
永続する効果を生むために重要なのは、TRPV1はカルシウムを良く通すことであり、細胞内に過剰カルシウム状態を作ることである。
ミトコンドリアは感覚ニューロンにランダムに分布しているわけではなく、エネルギー消費の多い部位に偏って存在する。例えば、感覚変換の部位、つまり終末のところに偏在している。
過剰のカルシウムはミトコンドリアのカルシウム隔離能力を超える。
Mitochondrial dependence of nerve growth factor-induced mechanical hyperalgesia.; Chu C, Levine E, Gear RW, et al., Pain 2011; 152: 1832-7.
TRPV1の独立効果は、ミトコンドリア循環の直接的抑制を含む可能性があることを報告した研究
The carcinogenic and anti-carcinogenic potential of capsaicin: a comprehensive review.; Bley KR, Boorman G, Mohammad B, McKenzie D, Babbar S., Toxicol Pathol 2012; 40(6): 847-73.
TRPV1を活性化するのに必要な量以上のカプサイシンは、ユビキノンの働きと競合してミトコンドリアの電子伝達系の働きを直接的に抑制する。
Capsaicin and its analogs inhibit the activity of NADH-coenzyme Q oxidoreductase of the mitochondrial respiratory chain.; Shimomura Y, Kawada T, Suzuki M., Arch Biochem Biophys 1989; 270: 573-7.
カルシウム過剰によるミトコンドリアの機能の損失と働き抑制は、神経組織の維持を困難にし神経終末の崩壊を招く。その影響は、ミトコンドリアの機能を阻害するのに十分な量のカプサイシンが存在する深さまで及ぶ。
カプサイシン適用が神経ペプチド(サブスタンスP や CGRP)の枯渇を引き起こすことを示した研究
カプサイシンによる神経損傷が神経ペプチドの枯渇を引き起こす
Pathobiological reactions of C-fibre primary sensory neurones to peripheral nerve injury; G Jancsó., Review Exp Physiol,.1992 May;77(3):405-31.
ラットを使用した実験。C線維(サブスタンスP・CGRPを含む)にカプサイシンを適用。
カプサイシンの反復的な適用が、サブスタンスP・CGRP(に対する疫反応性の繊維)を枯渇させることで痛みの発生を妨げるとしています。
“Capsaicin-sensitive” sensory neurons in cluster headache: pathophysiological aspects and therapeutic indication; B M Fusco 1, G Fiore, F Gallo, P Martelletti, M Giacovazzo Headache. 1994 Mar;34(3):132-7. doi: 10.1111/j.1526-4610.1994.hed3403132.x.
一回の髄腔内カプサイシン注射が一次神経線維からのサブスタンスPを枯渇させ、温度・化学刺激に対する閾値を長期間上昇させる。(ただし、機械刺激に対しては明らかな変化は確認されず)
Intrathecal capsaicin depletes substance P in the rat spinal cord and produces prolonged thermal analgesia., Yaksh TL, Farb DH, Leeman SE, Jessell TM., Science. 1979; 206:481–483.
神経線維の変性はせずに感覚神経ペプチドの枯渇が生じたことを報告する研究
Capsaicin induced depletion of substance P from primary sensory neurones., Jessell TM, Iversen LL, Cuello AC., Brain Research 1978; 152: 183–188.
カプサイシン適用がC線維の終末の損失が生じることを示す実験
これらの実験において多量のカプサイシン適用は永続的なC線維の変性を生じることが示されています。
脱感作や抗炎症作用などの機能変化は、C線維の侵害受容器の損失の直接的な結果であり神経ペプチドのレベルの減少もそれによるものであるとしています。
カプサイシンによりC線維の神経終末の損失が生じたことを報告
Ureteral axon damage following subcutanous administration of capsaicin in adult rats., Chung K, Schwen RJ, Coggeshall RE., Neuroscience Letters 1985; 53: 221–226.
局所的カプサイシン適用は皮膚侵害受容器の機能と支配を減少させる。
カプサイシンは侵害受容器の神経終末を損失させる。
Topical capsaicin in humans: parallel loss of epidermal nerve fibers and pain sensation.; Nolano M, Simone DA, Wendelschafer-Crabb G, et al., Pain 1999; 81: 135-45.
侵害受容器はPGP9.5を使用して可視化すると、数週間かかって再生する。
高濃度カプサイシン適用では完全回復まで24週かかる。
A randomized, controlled, open-label study of the long-term effects of NGX-4010, a high-concentration capsaicin patch, on epidermal nerve fiber density and sensory function in healthy volunteers.; Kennedy WR, Vanhove GF, Lu SP, et al. J., Pain 2010; 11: 579-87.
Topical capsaicin in humans: parallel loss of epidermal nerve fibers and pain sensation; Maria Nolano, Donald A, et al., Pain, Volume 81, Issues 1–2, 1 May 1999, Pages 135-145.
脱感作の正確なメカニズムは未だ不明。
皮膚神経線維の形態学的変化が脱感作に寄与するかを調べた。
カプサイシン0.075%適用
1日4回を3週間
カプサイシン適用は全ての刺激、特に熱刺激と機械刺激に対して脱感作を生じたが、この時、皮膚神経線維は変性を生じていた(PGP9.5免疫反応性の消失によりそのことが分かる)
カプサイシン適用の3日後には74%、3週間後には79%の神経線維の減少が見られ、カプサイシン適用の中止後6週間後には神経再支配が生じすべての感覚が戻っていた。
これらのことから、カプサイシン適用により生じる皮膚神経線維の変性が脱感作に寄与している。
カプサイシンにより神経線維の損失が生じることを示した実験
カプサイシン含有クリームの皮膚塗布を繰り返すと表皮神経線維の損失が、早ければ継続使用の3日後に生じます。
1日4回の塗布を3週間継続したところ、約80%の皮膚神経の活動の減少し、それに伴い痛み感覚の減少が生じました。
Nolano M, Simone DA, Wendelschafer-Crabb G, Johnson T, Hazen E, Kennedy WR. Topical capsaicin in humans: parallel loss of epidermal nerve fibers and pain sensation. Pain. 1999; 81:135–145.
皮下注射でも同様に神経線維の損失が生じたことを報告する研究
Simone DA, Nolano M, Johnson T, Wendelschafer-Crabb G, Kennedy WR. Intradermal injection of capsaicin in humans produces degeneration and subsequent reinnervation of epidermal nerve fibers: correlation with sensory function. J Neurosci. 1998; 18:8947–8959.
脱感作の様子がAδ繊維とC線維では異なることを報告した研究
被験者20人
2%を1時間適用
ほとんどすべての場合、適用後、短時間の過敏が見られた
脱感作が24時間後に見られた。約65%の刺激を検知せず。痛みは9%減少。
3日後、約25%の刺激を不検出。痛みは21%減少。
7日後にはほとんどすべての刺激が検出された5%のみ不検出。痛みは66%
短期間の刺激への敏感さの減少が生じた。
1日後がMaxで、その後少しずつ1週間かかって効果が減っていった。感覚が元に戻っていった。
Aδ線維とC線維は異なる経過をたどった。
Aδ繊維は1週間以内に完全に回復したが、C線維の方は長く脱感作の状態が続いた。1週間では消えなかった。
また、感覚の喪失範囲についても違いがあり、Aδ繊維はカプサイシン適用したエリアに限られたのに対し、C線維の方はそれよりも数センチ広い範囲で感覚喪失が生じた。
この理由としてAδ繊維とC線維の受容野の広さが異なることが影響していると考えられる。
Capsaicin-Induced Skin Desensitization Differentially Affects A-Delta and C-Fiber-Mediated Heat Sensitivity.; Sabien G. A. van Neerven* and Andre´ Mouraux., Frontiers in Pharmacology., 1. May 2020.Vol. 11. Article 615.