鍼の響きはあった方が良いのでしょうか?
鍼やマッサージ治療に特有のズーンといういわゆる「響き」の感覚がありますが、治療効果との関連で、あった方が良いのかなくて良いのか(あってもなくても変わらないのか)という事が日本ではよく話題になります。
*個人的な印象ですが、海外の文献では、響き(heaviness, soreness, numbness….)やLTR(ローカル・トゥイッチ・レスポンス:部分筋攣縮)は鍼の効果を確実にする現象、当たり前のことを聞くな、という感じで響きの(メカニズムについての議論はあっても)要否については議論にすらなっていないように見受けられます。
当院の立場
鍼の響きは、ポリモーダル受容器の反応によると考えられます。
ポリモーダル受容器の様々な性質(血管拡張作用・免疫に対する作用、自律神経系に対する作用、鎮痛作用…等。下図参照)を考えると響きはあった方が良いというのが自然な結論になります。
もちろん鍼(マッサージ)という「侵害刺激」あるいは侵害刺激に至らない程度であれ「機械刺激」が外部から生体に与えられている訳ですから、響きがなくても何らかの生理的反応はあるというのは当然です。この生理的反応が治療効果とみなせると考える立場なら響きは無くて良いという事になります。
しかし、
効果がある無し(効果の有無)という話と、どのくらいの効果があるか(効果の程度)という話はまったく別です。
当院は一回一回の治療において、わざわざ時間とお金を使って治療を受けた甲斐があった、と思えるはっきりした効果を得るには響きは当然あった方が良いと考えています。
ただ一方で、「効果の有無」「効果の程度」の話とは別に、響きが「好き・嫌い」という「感情」の問題もあるのでどうしても苦手という方は仕方ありませんが、そうでない限り、響きの強さを出来るだけ最適量になるようにコントロールしながら効果をあげていくことを目指しています。
詳しくは ポリモーダル受容器や鍼の痛みについて等のコンテンツをご参照ください。
☞ 鍼は痛いのか
☞ 浅い鍼の治療
(ポリモーダル受容器が適刺激を受けた場合に生じる反応)
(出典:Kumazawa T : Function of the nociceptive neurons. Japanese Journal of Physiology 40: 1-14,1990 より)